スターバックスの秘密:マス広告なしで成功するブランド戦略とは?
皆さん、こんにちは!インサイトフォースの山口です。20年近くブランドコンサルティングとして、企業のコーポレートブランドや商品・サービスのブランド戦略を立案し、端的に言えば「もっと売れるようにする」お手伝いをしています。
さて、皆さんは「ブランド」と聞いて何を思い浮かべますか?
高級なロゴ、有名なコカ・コーラの赤と白のロゴ、あるいはエルメスのバッグのような高級品... よくこんなイメージが挙がりますよね。
しかし、ブランドの本質はもっと奥深いところにあります。今回は、誰もが知るあのスターバックスコーヒーを例に、マス広告なしで成功するブランド戦略の秘密に迫ります。
ブランドとは?:記号と価値の融合
ブランドを理解する上で最も重要なポイントは、記号と価値という2つの要素です。
記号とは、ブランドを識別するための目印です。ロゴはその代表例ですが、五感で認識できるものであれば何でも記号になり得ます。例えば、プレイステーション起動時の「ボンッ」という音、ソフトバンクの白い犬のお父さんなど、視覚だけでなく聴覚やイメージも重要な記号となります。
そして、価値とは、そのブランドから感じるイメージや体験、提供されるベネフィットなどを指します。コカ・コーラなら「気分転換」や「爽快感」、エルメスなら「高品質」や「ステータス」といった価値が思い浮かぶでしょう。
ブランドとは、これらの記号と価値が結びついた総体なのです。
ブランドの力:無意識の選択を導く
コンビニで商品を選ぶ場面を想像してみてください。もし、全ての商品からブランドロゴやデザインが消えてしまったら、あなたはどの商品を選びますか?
おそらく、途方に暮れてしまうのではないでしょうか。
私たちは、無意識のうちにブランドの記号と価値を認識し、商品選択の判断材料にしています。爽健美茶のパッケージを見れば「爽やかで健康によさそう」と感じ、過去の飲んだ経験やイメージと結びつけて、自然と手に取っているのです。
このように、ブランドは私たちの消費行動に大きな影響を与えています。企業にとって、消費者の頭の中に効果的に記号と価値を植え付けることができれば、市場競争を有利に進めることができるのです。
ブランド戦略における3つの誤解
ブランド戦略について語られる際、よく見られる3つの誤解があります。
誤解1:ブランド=高級品
ブランド戦略は、高級品のためだけのものではありません。ドン・キホーテの「驚安の殿堂」というイメージも、立派なブランドと言えるでしょう。重要なのは、価格帯に関わらず、明確な価値を消費者に認識させることです。
誤解2:ブランド戦略=マス広告
マス広告はブランド認知度向上に有効な手段ですが、必ずしも必要ではありません。スターバックスは、日本上場時に一度新聞広告を出しただけで、その後はマス広告を一切行っていません。それでも、多くの人々に愛され、確固たるブランドを築いています。
誤解3:ブランド戦略=CI変更
企業理念やロゴ、社名変更などのCI(コーポレートアイデンティティ)変更は、ブランド戦略の一環として行われることもありますが、必ずしも必須ではありません。重要なのは、現状の記号と価値が、目指すブランドイメージと合致しているかどうかです。
スターバックスの成功:マス広告なしの秘密
では、なぜスターバックスはマス広告なしで、これほどまでに強力なブランドを築くことができたのでしょうか?
その秘密は、顧客体験にあります。
スターバックスは、単にコーヒーを提供するだけでなく、「サードプレイス」と呼ばれる、自宅でも職場でもない、くつろぎの空間を提供することに注力しています。
洗練された店舗デザイン、フレンドリーな接客、カスタマイズ可能なドリンク、そして心地よいBGM... これら全てが、スターバックスならではの特別な体験を創造し、顧客の心を掴んでいるのです。
スターバックスは、マス広告に頼ることなく、顧客体験を通してブランドの価値を伝え、深く浸透させることに成功したのです。
まとめ:真のブランド戦略とは
真のブランド戦略とは、単にロゴや広告を作り込むことではなく、顧客に提供する価値を明確化し、それを体験を通して深く理解してもらうことです。
スターバックスの成功は、この原則を忠実に実践した結果と言えるでしょう。
あなたのビジネスにおいても、顧客体験を重視し、独自の価値を創造することで、マス広告に頼らずとも、強力なブランドを築くことができるはずです。
次回の記事では、スターバックスの具体的な戦略をさらに深掘りし、あなたのビジネスに活かせるヒントを探っていきます。お楽しみに!